AIエージェント同士が会話する「Reason Network」から、AIのある組織の在り方を考える
AIエージェント同士をつなぐReason Networkを紹介し、その先にありそうなAI主体の組織について考えます。

ゼンクエンジニアのすぎもとです。
AIを使ったソフトウェア開発がもはや当たり前になってますが、今日取り上げたいのは Reason Network です。こいつは異なるAIエージェント同士をネットワークで接続し、直接会話や作業の依頼をできるようにするというツールです。
Reason Network の機能を紹介しつつ、そこから考えたことを書いていきます。
Reason Networkとは?
Reason Network は、Reason Machinesが公開している、AIコーディングエージェント同士を接続するためのツールです。Claude Code、Codex、Cursor、Gemini CLI、OpenCode など、異なる AI エージェントを接続し、エージェント同士がメッセージを送ったり、質問したり、作業を依頼したりできます。
これだけだと CLI のなかで別の CLI 呼べばいいんじゃないの? って思ってしまうんですが、このツールは、自分のPCだけでなく、別の(同僚の)PCで動いている AI エージェントとも通信できる んですよね。
例えば、同じリポジトリを複数人で開発しているとき、それぞれの開発者が AI エージェントを使っていたとします。
- Aさんは Codex を使ってバックエンドを開発している
- Bさんは Claude Code を使ってフロントエンドを開発している
通常であれば、Aさんの Codex がフロントエンド側の仕様を確認したくなった場合、人間であるAさんがBさんに質問して、場合によってはBさんは Claude Code に確認、そしてAさんに回答、Aさんはそれを Codex に指示、といったやり取りが発生します。
Reason Networkを使えば、Aさんの Codex がBさんの Claude Code に直接質問して、仕様を確認できるんです。もちろん、単純な質問だけでなく「こちらのAPI仕様に合わせてフロントエンドを修正してください」といった作業依頼も可能です。AIエージェント同士で勝手に話して進めてくれるわけです。
誰が何をしているか把握できる
Reason Network の中身をちょっと紹介していきましょう。こいつは、単に AI 同士がメッセージを送りあうだけじゃないです(まあそれなら簡単ですからね)
チームとして動いている別の AI エージェントについて、以下の情報を取得できます。
- どのメンバーの AI なのか
- どの PC で動いているか
- どのエージェントなのか(Claude CodeやCodexなど)
- どのリポジトリ・ブランチで作業しているか
- 現在作業中なのか、待機中なのか
- 何の作業をしているか
これらを参照することで、AI 自身が適切な相手を探して問い合わせるってことですね。たとえばファイルを修正しようとした際、別のメンバーの AI が関連する部分を作業していれば、その AI に現在の変更内容や今後の予定を確認して作業を進める、みたいなことですね(現時点では同一ファイルの編集競合を自動的に防止する機能は開発中らしい)
エージェントを待機させて仕事を受け付ける
もう一つ面白いのが、serve 機能です。こんなふうに起動します。
reason network serve claude
すると、Claude Code をチームからの依頼を受け付けるリモートのエージェントとして起動できます。
他のメンバーの AI がこの Claude Code に作業を依頼すると、実際に処理を行い、結果を返します。依頼元ごとに会話の履歴を維持でき、複数の依頼元からの処理を並列に扱うこともできるようです。Codex や Grok でも同様の機能が提供されています。テストやコードレビューを担当する AI を用意し、他の開発者の AI から利用するみたいなことができます。人間としてのテスターとその役割の人が使う AI がせっとになってネットワーク上に参照可能な状態で存在する、みたいな感じです。まあ面白いですね。
通信方式とライセンス
Reason Network の通信エンジンは Rust で実装されてるようです(最近の流行か)。通信は、iroh を利用した P2P なのでサーバは要らないですね。同じ LAN 内であれば PC 同士が直接通信し、インターネットを経由する場合も可能な限り直接接続します(直接接続できない場合には暗号化されたリレーを利用するらしい)
AI 同士連携には MCP や各エージェント固有の Hooks を使ってます。エンジンはオープンソースです。Reason のアカウントをつかうと CLI (こっちはオープンソースではない)も使えます。
詳しくは 公式ドキュメント や GitHubリポジトリ を参照。
他人のAIの利用枠を使えていいのか?
この仕組みを見て最初に思ったのは同僚のAIサブスクリプションの利用枠を他人が利用できてしまうんじゃないの? ってことです。これこのまま文字通り取れば規約違反です。Anthropic の Claude Team に関する公式ヘルプには、別のユーザーの残り利用枠を消費する目的で、そのアカウントを経由して仕事を処理させることは禁止されていると明記されてますし、未使用の利用枠を別ユーザーに移すことも禁止です。 Codex も同じような規約があります。
なので、単に通信できるからといって、自由に他人の利用枠を使えるわけではなさそう、、、ですよね。
「仕事を他人に任せること」と「利用枠を共有すること」の境界は?
でもですよ。
日常の業務では「ここまでは自分でやったけど、残りはお願い」なんてことは普通にあります。このとき、引き継いだ仕事は、もともとAさんの仕事ですが、引き継いだらそれはもうBさんの仕事でしょう。Bさんが自分のAIを使って仕事を進めることには、通常は何も不自然なところがありません。
で、これをAI同士が勝手にやったら急に規約違反になるのか? ってことです。「AさんのAIがBさんのAIに仕事を依頼し、BさんのAIがその作業を担当する」これは単なる業務の委譲なのか、それとも他人の利用枠を使ったことになるか。
さらに、Bさんがあらかじめ「この種類の作業は自分のAIに任せてよい」と許可していた場合は? 人間が毎回承認していればOKになるなら、人間はAI同士の依頼を右から左へ流すだけの存在になります。人間の承認がないから禁止ということなら、AIに業務を自動的に割り振らせること自体がおかしい。
これ外形的に「他人のAI利用枠を利用している」だけなのか、「他人に仕事を依頼しているだけ」なのかを判断するのはきわめて難しいことにならないでしょうか?
これについては、ぼくはそもそもAIサービスの利用枠を人間ごとに割り当てるというサービス設計が、そのうち意味がなくなるんじゃないかと思ってるんですよね。
「AさんのAI」「BさんのAI」はいつまで続くのか
現在でも組織向けの追加クレジットや従量課金の仕組みはありますが、ここで考えたいのは、各ユーザーに割り当てられた定額利用枠という考え方ではなく、組織全体でなんらかの仕事をするためのトークンを低額で払い出すっていう仕組みです。人の生産に対してトークンを使うのではなくて、組織の生産に対してトークンを使うと言い換えてもいいかもしれません。
AIが自律的に動いて、他のAIに仕事を依頼することが普通になれば、今のように人間とAIを対応させて利用枠を厳密に分ける方式は、どんどん扱いにくくなっていく気がします。
ぼくは今後はAIが仕事の主担当になり、人間が副担当になる時代が来るのではないかと思っています。AI 同士が自律的にやり取りして作業を進め、どうしても人間による判断や操作が必要になったときだけ、適切な権限や役割を持った人間に依頼する。
人間は AI から必要に応じて呼び出されるロールになって、サブエージェントと同格の存在になるんじゃないかなぁと思ってるんですよね。
おわりに

Reason Networkは、現在のAIコーディング環境で実際に使えそうな、なかなか面白いツールだと思いますが、さっき書いたようにAIが主体になっていく未来を考えると、こういうソフトウェアは長く使われるというよりは過渡期の存在なのかなあ、とは思ったりします。
今は「人間が使っている AI 同士をどう接続するか」という問題ですが、その先には「 AI が主体となって仕事を進める組織をどう動かすか」という、まったく違う問題が待っているんじゃないか、なんてことを考えつつ、この記事は終わりたいと思います。
それでは、また。